以前のエントリーで伊藤真の「続ける力」のことを書きました。
勉強に限るわけではありませんが、スポーツ、仕事においても概念を正しく理解する事とそれを身につけるために反復練習する事が大切だと思ったのでその点について
1.正しい概念理解
- 新しい事を学ぶ際に、その事の全体的な体系(学問なら学問体系、スポーツなら何が重要か)などについて分かった人やその点を踏まえて理解するのが非常に大切です。
- 何事も始めが肝心というとおり、特に新しい分野について学ぶときには正しくかつポイントを押さえた理解をする事が必要になります。
- 一旦間違えた形でインプットをしてしまうとその後で修正するのが大変になるので、始めから正確に正しく概念や言葉は覚えた方がいいです。
- 例えば、社会の地名や漢字、理科の専門用語などというのはその最たるもので正確に覚えずに間違えた用語で覚えたりすると後から修正するのがとても面倒になります。
- 概念を正しく理解するというのは、算数や理科でとりわけ重要となります。特に単に分かるということではなく、この新たな単元においては何が重要であってどういうところがこれまでと違って新しいか、何をマスターすればよいのか、ということを意識しながら理解する事が大切です。また、それを理解する事によってどんなことが言えるようになるのか、何が出来るようにあるのか、という視点も大切です。
- サピの場合、授業でこうした新しい概念の導入、その使い方はうまく導入されます。自分が授業に出ている訳ではないので教え方は分からないのですが、理科、社会のテキストの作り方、演習問題やテストの内容を見るかぎりではどんな事を教えたいのかメッセージが見えてきます。
- サピの授業では、まずこの新しい概念の導入について子供達の好奇心をもり立てる形で導入がされていると思います。毎回授業に出て新しい単元についてInputするところは、極めて大切でここは長年子供達を教えてきてノウハウのある塾の講師とテキストに負うところは大きく、テキストやテストの完成度を見てもその内容を伺う事が出来ますし、家庭で同じことをとするのは難しいです。
2.反復練習及び定着のプロセス
- 一旦新しい事を習ったらそれを消化して自分の物にする事が必要となります。
- 例えば、算数であればまずはその概念をストレートに適用した基本問題を解く事について概念になじみその問題の解き方に慣れる事が必要となります。その上でいくつか視点の異なる事、注意が必要な応用問題でその概念の定着を図る事になります。国語でば、漢字練習、知識の理解及び暗記、読解であれば頭の使い方のトレーニング、になります。理科では、算数同様概念を理解した上で、用語や考え方の理解、暗記とその適用の練習、社会も同様ですが、覚える事が理科と比べるとウエイトが大きくなります。
- この定着のプロセスですが、特に計算や基本パターンの問題、漢字、暗記というのは単純な反復練習の繰り返しになり、飽きてしまいがちになります。知っていることを定着するというのは一度聞いたらできるという天才的な人を除けば、ある程度概念に慣れる上でも、また正確に知識を覚えるためにも簡単な問題をたくさん解いたり、漢字練習をしたり、暗記という単純作業の一定量をこなすことが必要不可欠となります。
- しかし、ここがとっても飽きてしまいがちな部分となります。特に男の子で落ち着きがない子供の場合、このプロセスを軽視しがちとなります。ところが、中学受験のみならず、大学受験にいたるまで、また資格試験にいたるまで一般にゴールがある勉強の場合においてはこの「基本的な動作の反復継続」というのが非常に大切となります。
ここはスポーツやピアノなどでも同じですが「基本が大事」です。 - 「勉強できない」のは、1.の理解でこけているのであれば分からないことがはっきりしているので、対処方針は分かりやすいです。概念が理解できていて問題になると解けないというのも、1.の理解があやふやというところで、割と問題が見つけやすいのですが、問題は、基本問題だと簡単なのでそのときは出来るんだけど、練習量が不足していてちゃんと定着しておらず、しばらく経ったり、ひねった設定になるとできない、というケースが問題が発見しにくくなります。
- これは、実はその子供にとって定着するところまで必要な演習量が足りていないというのが問題だったりします。そこを本当は「もう大丈夫」というところまで演習を積む必要があります。一般的には「やりきった」と言えるレベルに足りないところまでしか出来ていないケースが多いと思います。
- ただ、これが非常に単調でつまらないわけです。だいたい、習い事が三日坊主というの同じ仕組みになります。英単語を暗記を思い出してもらうと分かりますが、「大切なのは分かるが、極めてつまらない」のでこのところに飽きのこない形での反復練習をどう組み込みのか、といのがポイントになると思います。
- サピの場合、各単元の復習用に問題演習、翌週の小テスト、マンスリーテスト、3ヶ月くらいのスパンでの組み分けテスト、また算数理科については基礎トレ、暗記系の理科社会にはコアプラスといろいろな局面で習った事を反復して定着を図るための仕組みが組み込まれています。
- また、カリキュラムそのものについてもスパイラルシステムで繰り返し少しずつ深堀していくので、忘れそうになる頃にまたその単元に触れるため、マンスリーで点数が取れなかったとしても、目先のテストの結果を離れれば、十分なトレーニング量を積んで定着させるシステムになっていると思います。
- 従って、マンスリーの成績が悪くても3ヶ月程度のスパンで見ると、全く知らなかった事が定着して相当程度まで使いこなせるようになるレベルまで習熟すると思います。
3.再体系化/頭の中での概念の操作
- その定着がちゃんと出来たら、もっと広い全範囲についてその科目的な考え方に沿って習った事を頭の中で自分なりに再体系化し、自分の頭の中でそうしたコンセプトを操作する、問題を見て何をあてはめればいいか分かるようになるということが必要になります。例えば理科なら化学、生物について各単元の目次沿って重要な事が何かが頭の中でイメージできるようになるのが理想です。社会であれば、関東地方、地形、農業、工業、交通などについて空でスラスラと重要項目が言えるようになるのが仕上がりのイメージになります。
- これは主として各単元の学習が一巡した6年時の目標になりますが、いわゆる頭がいい子供、応用力がある子供というのは、1、2のプロセスをやりながら自分の知っている事に新しく習った事を体系的に位置づけて、ここでは何が分かっていればいいのか、これはどのようなケースに使えるのか、分析しつつ押さえていいく能力が高いのだと思います。
- とはいえ、現時点では各単元についてそのそれぞれの単元でマスターすべき事をひとつずつ押さえておけばその再体系化というのはまた問題演習を通じてまた全範囲を終わってから全体を俯瞰する事により進められると思いますので、現時点でこれを求めるのは酷なのですが、最終的にはそこに到達するというのが一つのゴールイメージになります。
4.応用問題/難問とのバランス
- 勉強という意味では、1.は新しい事を習うので好奇心がある子供にとっては楽しい事ですが、2.は分かっている事をくどくどとやりたくない、面白くない、というケースはよく出てくると思います。ここをストイックにできるか、というのが、スポーツではプロになれるかの差なのだと思います。よく、イチローのコメントをみていると随所に同じ事にこだわり続ける基本を大切にする姿勢を感じます。
- ただ、子供の場合はこの「飽き」をクリアするのは大変なので、カリキュラムをスパイラルにして目先を変えて何回も反復練習したり、応用問題、難問などで目先を変えてそうした要素に取り組むのもあるかと思います。応用問題の場合、基本問題とは違う能力が必要となりますが、知的な負担は大きいものの、基礎的な要素も盛り込まれるので、飽きて来たときには適度な分量でこうした応用問題をやるのもいいかと思います。
- しかし、基礎が確立している、つまり計算、パターンに習熟しているとそこには知的な負担をかけずにすむので、応用問題では何に気づけばいいのか、という「気づくべきポイント」にのみに注力する事が出来ます。ちょうど、車の運転においても初めてのときには教習所では車そのものの操作を習うのですが、免許を取って運転に慣れてくると、車の操作自体にはほとんど意識しないでできるようになって、車の流れや人の動きなどに気を向ける事が出来るようになるのと同様に基礎が確立すると応用に意識を向けられるようになります。
- したがって、現時点でいわゆる「基本」を押さえて「型を身につけるための反復練習」というのはとっても大切で、サピのカリキュラムもこうした考え方に基づいているのだと思います。
- ただ、悩ましいのは我が子のような落ち着きのない男の子の場合は、いくら「基礎」といっても飽きてしまってやりません。これを無理矢理やっても歩留まりが悪いので、完成度が低いのは仕方ないと割り切って、むしろ難問や応用問題等をまぜて引いて底上げではなく、上のレベルをあげるようなことをしておくことが必要かと思ってやらせています。ただ、基礎が危ういとこれもまた空回りになる気がして諸刃の剣と思い悩ましいところだと思っています。この辺りは本人の性格、精神年齢、モチベーションもあるので難しいところです。