春期講習ですが、算数も国語も通常時と比べてAのテキストがなくテストもないため、かなりリラックスしている様子。理科と社会は、これまで通りですが、カリキュラム的に軽めの単元のようで復習テスト後は我が子もリラックスしているようです。
他方、第10回の授業からコアプラスのテストが始まると思うので今回は特に理科、社会と関係の深い暗記についてその重要性について書きます。
1.理解をする事の重要性
ー勉強はどんな科目でもその科目特有の考え方や思考形式があります。算数、国語については小学校1年生から始めていますが、理科、社会は3、4年から本格化してきますが、受験という意味で言うと理科では物理、化学、生物、地学分野、社会では地理(日本地理、世界地理)、歴史(日本史、世界史)、公民、時事となりますが、中学受験では世界地理はごく一部、世界史はほとんど出てこないため、日本地理、日本史、公民、時事となります。
ー思考様式を踏まえた上で毎回の単元についてしっかりと理解をする事が算数、理科、社会では重要となります。国語は毎回の単元というを切り出しにくく、思考形式と語彙、入試に出るような文章を精読した量が重要です。
ー新しい単元の理解というのは、初めて話を聞いてその概念に触れ、専門用語やその分野特有の考え方を知り、それを理解した上で問題演習を通じて馴染ませ、定着させていく、という事です。
ー理解をした、問題が解ける、というのは、そうした基礎概念を理解した上で類似の概念や考え方を問われたときにそれを適用する事ができるという事だと思います。
2.科目による違い
1)算数
ー基本的な概念理解とその扱い方のマスターが重要です。応用問題も還元すると基本の組み合わせである事が多いのですが、この「基本」をマスターする、ことと、「組み合わせ」、「からくりを見抜く」ことと、「計算処理」を行うということが融合しており、これらの力を総合的にあげていく事が最終的には必要ですが、現時点では、
ー計算処理力
ー基本問題のパターンの定着
が非常に重要となります。一通りすんだところで、組み合わされたパターン、入試問題とレベルをあげていく事となります。
ーこの算数においてもいわゆる典型的な入試のパターン問題をマスターする事が近道になります。これは何も答えを丸ごと覚えるというものではなく、そうした問題を解くために必要な「キーとなる着眼点」をマスターする事がポイントとなります。これを実際の問題で見抜く事が出来るかどうかは、修行が必要となりますが、こうした事を踏まえてもある程度の経験によって克服できる分野があります。
ー算数については、「暗記」というよりもこうした「理解」に基づいて演習する事で自然に解法がマスターされるという側面が強いのですが、逆にこの解法パターンを強調した考え方もあります。中学受験ではありませんが、和田秀樹氏の「受験は要領」という本がそうしたコンセプトで書かれた本になります。
私は、この一番古い本しか読んだ事がないですが、中学受験編や、2015年版も出ているようです。たくさんシリーズがあるようですが、基本コンセプトは同じだと思いますので、気になる方はアマゾンの書評を調べてみてください。
2)理科
ー理科は、自然界の現象をどう体系的に説明するか、という性質の科目です。子供のなぜなんだろうというのを法則や仕組みで説明していくという好奇心をそそるものなのですが、その現象をどのようにとらえて説明をつけるか、というところは完全にロジックの世界になります。
ー現象を理解して記述するアプローチの仕方が、物理、化学、地学、生物でそれぞれ異なっています。またそれぞれに使われる用語や概念も違っています。
ー小学校の間は、複雑な式や計算をすることが出来ないために、物理、化学の分野は限られた計算問題しか出来ません。他方、地学、生物は多分に現象の説明と分類学的な要素があるので中学受験でもかなり細かなところまで説明する事が可能です。
ーこのため、中学受験の範囲では、生物、地学の覚えるべき情報量が多く、物理、化学の分野は理解して計算が出来るようになる必要はありますが、それもそんなに複雑ではなく覚えるべき事は少ない、という結果になります。
ー必然的に生物(植物、昆虫、人体)の細かな暗記のウエイトが半分くらい、物理、化学の現象に即した計算問題が3割程度で後は残りの地学その他の分野でということになります。
ー完全な暗記オンリーではないですが、理解に基づいた記憶が必要となります。
3)社会
ー地理、歴史、公民とありますが、基本は膨大な固有名詞を頭に体系的に流し込む事が必要となります。
ー日本地理なら、各地域の自然の山、川、平野から始まり、気候、農業、工業の特徴、都市名、各地域のつながり(交通、貿易)そして統計データといった具合。歴史は、事件名、人物名、年号とその流れ、公民では、憲法や国際機関の基本的事項と時事的なトピックスといったところでしょうか。
ーどれもゼロから一気に流し込むという事になり、かなりはっきりとした暗記が重要となります。
ー考えたら分かるという物ではなく、覚えているか、否か、漢字も含めて正しく書けるか否か、という事になります。
ーこのため、暗記するウエイトが必然的に高くなります。
4)比較
これら3科目を見ると、理解中心が算数で、暗記中心が社会、理科はその中間という性質になるかと思います。また、算数の場合は、基礎的なコンセプトだけを理解していても問題演習をこなさないと解けませんが、理科はそこまで演習量をこなさなくても基本的な知識の定着がなされていればだいたい解ける感じではないでしょうか。社会は、知っているか、知らないかが大きくて、統計データや地理的な状況、歴史背景で判断させる思考系の問題もありますが、これとて中学受験必須マスター事項を覚えた上での判断が必要とされます。つまり、暗記していないといけないという事です。
3.暗記の重要性
前置きが長くなりましたが、理解しているだけでは問題が解けません。特にテスト問題では重要事項についてうろ覚えであると間違えるような選択肢を用意しています。塾側は長年の経験でどういったところを間違えやすいのか把握しているので、そうした生徒の理解の不十分なところを着いてくる訳です。これは入試においても同様です。
「知らない」を0%、「だいたい知っている」を70%、「完璧に知っている」を100%としたとすると、特に社会や理科の選択においては、70%では、歩留まりが悪くなり、0%の差があまりつきません。何も知らない方が先入観がなくフレッシュな気持ちで考える事が出来るので、変な引っかけ的な問題にかえって引っかからない事すらあります。
間違えるのは、結局「理解」と「暗記」が不十分なために起こる事が特に理科と社会で多いです。理科についても現時点では計算問題が出ておらず、思考系の問題も入試問題のように深く演繹させる問題はないので、重要事項を覚えていて現象のオチを知っていればそんなに間違える事はありません。社会についても同様で2つ以上のことを組み合わせて答える問題は、それぞれを正確に覚えるている必要があるために、うろ覚えだと、例えば70%×70%で49%と正解率がかけ算で悪くなります。
このため、単に理解できている覚えているのではなく、単元についてマスターしておくべき事は一回は「完璧に暗記」することが必要となります。上述したように不完全に覚えるとかえって覚え直したりする必要があるのでハマります。間違って覚えると修正がかなり大変になります。社会とかで漢字を間違えて覚えると悲惨なのでよく確認した方がいいです。
4.暗記という作業
親御さんは、英単語の暗記で苦労した事があるかと思いますが、暗記とはまさにあの作業です。単に読んで理解できただけでは駄目で紙に書いたり、口でぶつぶつ唱えたりしてちゃんとキーワードを覚えているか繰り返しやって確認する必要があります。全く面白くなく苦行以外の何者でもありません。
暗記については、その作業のために一定の時間を取って取り組む事が必要で、理解については問題演習を通じて深める事が出来るかと思いますが、暗記はまさに一連の専門用語を漢字で書けることも含めて覚えていく作業なので、それなりの精神エネルギーを向ける必要があります。
幸い小学生時代は論理的な意味付けのない丸暗記がたやすくできる年代なので、この時代に膨大な知識を大量に流し込んでおくと後々楽になります。一旦、頭の中にそうした用語が体系的に入ると後は中学高校でこの編み目を細かくより精緻な専門用語や概念で埋めていく事になりますが、中学受験はその基礎となる骨格作りをしていく知識体系を構築する物だと思います。
そのためにも毎回の特に理科と社会については暗記作業を怠らず積み上げていく事が必要です。6年になってからでいいやと思っていると、6年には6年でそれを基礎とした応用をやらねばならず、「一期一会」ではないですが、5年では毎回習った単元の概念、用語について理科、社会は毎回完璧に仕上げる気持ちで臨まないと、消化不良で積み残しをすると処理できなくなると思います。
日々のこうした積み上げを補強する作業としてデイリーチェックやコアプラスのテストがあると思うので、ここでしっかりとやることが大切だと思います。
なお、言う間でもありませんが、中学受験が終わってからも大学受験、社会人と膨大な情報に触れてそれを取捨選択、整理して必要な事が延々と続きます。
ネットで検索する事ができるから思考力があればいいという論調がありますが、思考力の前提としてある一定の学問体系や思考のフレームワークというのがあり、それを規定しているのはその分野の概念と専門用語になります。その概念や用語の意味の正確な理解なくして、正しい論理的な思考や演繹をすることはできません。もちろん、専門バカになって頭が固いというのも困りますが、巷の議論はそれ以前だと思います。地頭とか着眼点と言いますが、これとて何の思考訓練や基礎がないところに求めても得られません。
国語についてもいえますが、思考力を左右するのは論理力もありますが、思考、概念を規定するためには言葉が基礎となります。語彙がどれだけ豊富かでその人の思考の緻密さに影響を与える事となります。テレビでいう解像度と同じく、仏のテレビ、ハイビジョン、4Kと解像度が上がるほど綺麗見えるように、語彙が多いほど緻密な思考と表現ができることになります。単に難語オタクになってはいけませんが、母国語の語彙と論理的思考力が今後の子供の強い武器になると思うので、自然に覚えるのが望ましい事ではありますが、ある時期にストレッチしてでもこうした語彙や知識体系を流し込み、トレーニングするのは意味があると考えています。
頭の良さというのは、母国語の語彙で上限が決まります。また将来外国語を学ぶときにも母国語の語彙を越えて第二外国語の語彙を増やすのは難しいと思います。
そうした意味で、暗記については算数力の方を重視して暗記を軽視しがちな傾向がある気がしますが、それぞれ違ったスキルセットなので、ゆめゆめ軽視する事なく、取り組んでいく事が大切です。